国の年金を中心とした情報をご提供します。
国の年金額は、過去の物価下落時に年金額を据え置いたことなどにより、平成25年9月時点で本来の水準より2.5%高くなっていました(特例水準)。この特例水準は法律改正により、25年10月に1%、26年4月に1%、27年4月に0.5%ずつ年金額を引き下げて解消されることになっています。
一方、毎年度の年金額は、年金をうけ始める方は賃金変動率で、受給中の方は物価変動率で改定されます。25年平均の全国消費者物価指数の対前年比変動率は0.4%、また賃金変動率は0.3%となりました。
ただし、賃金の伸びよりも物価の伸びが上回った場合は、公平性の観点から賃金の伸びで改定するルールがあり、26年度は受給中の方も賃金変動率で改定されます。このため26年度の年金額は、賃金変動率の0.3%と、特例水準解消のマイナス1%が相殺され、0.7%の引き下げとなります。
就業 | 平成26年3月まで | 平成26年4月分以降 |
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基礎年金(満額) | 64,875円 | 64,400円 |
厚生年金(標準世帯)※ | 228,591円 | 226,925円 |
※夫が平均的収入(平均標準報酬月額36万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯の場合。
平成24年8月に公布された「年金機能強化法」により、26年4月から国の年金制度が一部見直されます。主な内容は以下のとおりです。
産前産後休業期間中の厚生年金の保険料免除
育児休業と同様、産前産後休業期間中※も厚生年金保険料が本人・会社とも免除されます。健康保険の保険料も同様です。
将来の年金額は、産休期間中も産休前の標準報酬月額で計算されます。
産休終了後に職場に復帰し報酬月額(給料)が下がった場合は、産休終了後の3ヵ月間の報酬月額をもとに、標準報酬月額が改定されます。
保険料免除の申請や職場復帰後に報酬月額が低下した場合などは、育児休業と同様、事業主経由で届出が必要です。
※産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間のうち、就労しなかった期間。
就業 | 産前産後休業中 | 育児休業中 | 復帰後 |
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保険料負担 | 保険料免除 | 保険料免除 | 保険料負担 (標準報酬改定の特例) |
↓ 産前産後休業終了後も 同様の標準報酬の改定 |
60歳台前半の老齢厚生年金の障害特例の改善
60歳台前半の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢に達しており、障害等級の1級~3級に該当する場合は、本人が請求すれば、その翌月から報酬比例部分と定額部分が受給できました(=障害特例)。
それが、請求時点ではなく、障害状態にあると判断されたときにさかのぼって、報酬比例部分と定額部分の受給が可能になります。
70歳後の繰り下げ受給の改善
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、66歳以降の希望するときから繰り下げてうけることができます。その場合は受給開始時期に応じて年金額が増額(1ヵ月につき0.7%)されます。
これまでは、70歳に達した後に繰り下げ受給の申し出をすると、申し出のあった翌月分以降の年金しか受給できませんでした。
しかし、70歳以降の繰り下げ増額率は42%(0.7%×60ヵ月)で一定のため、70歳後(たとえば72歳)に申し出たとしても、70歳になった月の翌月分からの年金が受給できるようになります。
未支給年金請求の遺族範囲の拡大
年金はうける権利がなくなった月分まで支払われます。
これまで年金受給者が死亡した場合、死亡月分の年金は、死亡した受給者と生計を同じくしていた2親等以内の親族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹)に「未支給年金」として支給されていました。
その遺族の範囲が生計を同じくしていた3親等(おい・めい、子の配偶者、おじ・おば、ひ孫、曾祖父母など)以内に拡大されます。
うけられる順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、3親等の親族の順です。
遺族基礎年金の父子家庭への支給
これまで遺族基礎年金は亡くなった人に生計を維持されていた子※のある妻または子に支給されていましたが、子のある夫にも支給されます。具体的には、遺族基礎年金の支給要件や遺族の範囲に規定されている「妻」が「配偶者」になります。ただし、平成26年4月前に父子家庭となっているケースには適用されません。
※18歳の到達年度の末日までの子または20歳未満で障害等級1級・2級の子。