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公的年金

世代間公平性の観点から公的年金の特例水準を解消

本来より2.5%高い年金額が将来の年金財政にも影響

現在の年金額は、平成11~13 年の物価下落時(1.7%)に年金額を特例的に据え置いたため、本来よりも高い水準になっています(特例水準)。特例水準については、物価が上昇しても年金額を据え置くことで解消する予定でした。しかし、その後も賃金・物価は下落傾向が続きました。しかも、特例水準と本来水準の年金額改定のルールの違いもあり、両者の差は23年度時点で2.5%に拡大しました。

特例水準と本来水準の差を年金額全体で見ると、年間約1兆円と見込まれ、このままでは将来の年金財政にも影響を与えます。そこで政府は、保険料を納めている現役世代との公平性を図る観点から、特例水準を早期に解消するための法案を国会に提出。平成24年11月16日に成立し、同26日に公布しました。

物価スライドとは別に25年度から特例水準を解消

特例水準の解消は平成25~27年度にかけ3段階で実施されます。具体的には、通常の物価スライドとは別に、25年10月に1.0%、26年4月に1.0%、27年4月に0.5%ずつ年金額が引き下げられます。

総務省が発表した平成24年平均の消費者物価指数は23年平均と同じだったため、25年度の年金額は24年度と同額になります。ただし、同額なのは4~9月分までで、10月以降は特例水準の解消により1.0%引き下げられます(表参照)。表のうち、26年4月以降は物価や賃金が変動しない前提(年金額が25年4月時点と同額)の年金額です。物価や賃金が下落した場合は、その下落率を加えて引き下げられ、物価や賃金が上昇した場合は、特例水準解消の引き下げ率は減少します。

特例水準の解消で年金制度は本来の姿に

特例水準の解消は、年金制度にとって大きな意味があります。

平成16 年改正により、将来の負担(保険料)の上限を設定し、その範囲内で給付のバランスを図るしくみとして「保険料水準固定方式」と「マクロ経済スライド」が導入されました。

年金額を改定する際、少子高齢化の影響を反映させるのがマクロ経済スライドで、これまでの年金改定率から「公的年金加入者の減少率(少子化の反映)+平均余命の伸び率(高齢化の反映)」を差し引いて、年金額が決定されます。給付と負担の均衡がとれた段階で、マクロ経済スライドによる調整も終了します。

マクロ経済スライドは、特例水準の解消が前提だったため、いまだ実施されていません。今回の措置は、単なる年金額の引き下げではなく、デフレ経済からの脱却とともに、年金制度を本来の姿に戻す意味があります。

平成25年度以降の年金月額の推移(特例水準解消)のイメージ
年 月 基礎年金(満額) 厚生年金(標準世帯)*
平成25年4月~9月 65,541円 230,940円
平成25年10月~
(▲1.0%)
64,875円
(▲666円)
228,591円
(▲2,349円)
平成26年4月~
(▲1.0%)
64,200円
(▲675円)
226,216円
(▲2,375円)
平成27年4月~
(▲0.5%)
63,866円
(▲334円)
225,040円
(▲1,176円)

*夫が平均的収入(平均標準報酬36.0万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金をうけ始める場合の給付水準。

※平成26年4月以降は仮に物価・賃金が上昇も下落もしない前提の年金額。

公的年金

公的年金加入者数は減少したが、厚生年金加入者数は増加

厚生労働省は「平成23年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を公表しました。23年度末の公的年金制度の加入者数は、前年度末より51万人減の6,775万人となりました。このうち第1号被保険者は1,904万人(34万人減)、第2号被保険者は3,892万人(10万人増)、第3号被保険者数は978万人(27万人減)となりました。
厚生年金の適用事業所数は174万5,000事業所で、前年度末から4,000事業所減少しています。一方、被保険者数は10万人増えて3,451万人となりました。標準報酬月額は30万5,000円で前年度より0.4%減少しましたが、標準賞与額の1回当たりの平均が42万9,000円と1.3%増加したため、総報酬ベースで年額1人当たり標準報酬額は0.2%増の431万3,000円となりました。
厚生年金の受給者数は、前年度末に比べ105万人増の3,048万人。このうち老齢年金受給者数は1,383万人でした。なお、老齢年金の平均年金月額は15万2,396円で前年度に比べ948円減少しました。

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